輸送システム工学プロジェクト (Transportation Systems Project):


~Welcome to Paper Vehicle Project~


この授業は,広島大学工学部第一類の輸送システムプログラムに配属された学生の必修科目になります。

3年次後期 (第6) セメスターの金曜5~8時限 (3・4コマ) に開講されますが, 授業時間外にも,グループでの設計・製作作業,討論ならびにプレゼン資料・レポート作成のための時間が必要になることから,4単位の修得となっています。


以下,授業の概要を紹介します。

  • 紙材による,人 (運転者) が乗った状態で地上を人力で移動することが可能な乗り物 (Paper Vehicle: ペーパービークル) の設計・製作を,5~6人のグループ (班) に分かれて行います。

    そして,各グループで完成させたその乗り物で,性能と重さ (人の体重も含む) を考慮して,競技会 (直線レース (15m)耐久レース (3往復)他 ( 詳細は下記参照) ) を実施し,順位を競います (なお,材料有効利用についても審査の対象になります)。
  • 使用可能な材料は,所定の厚紙紙パイプ,および接着剤 (木工用ボンドとエポキシ樹脂) のみを基本とします。

    設計段階においては3Dのモデリング (CAD) と構造解析 (FEM: 有限要素法) のためのソフトウェア (SOLIDWORKS®) が,製作段階においては所定の工具 (ジグソー,ドリル,ディスクグラインダーといった電動工具も含む) が,それぞれ使用可能です。

    これらの材料や工具類の他,ソフトウェアの使用に必要なライセンスは,大学側で用意します。
  • 乗り物の形状および駆動の仕方 (仕様) について,設計方法は自由です。

    ただし,乗り手自身が直接地面に触れてはいけません。さらに,乗り物自体が地面から完全に離れて (浮いて) しまってもいけません。

    また,この授業の競技会では毎年独自に特別ルールを設けているため,その条件をクリアする必要があります。
    各年度での例:  荷物運び (おもりを積載) / 足漕ぎ (漕ぎ方を指定) / 曲線 (直角カーブ) / 段差 (乗り越え) / ブレーキ (制動距離) / 坂道 (登坂)
  • 設計・製作作業の過程 (検討内容と作業工程) も,評価の対象になります (この授業は,単に乗り物を製作して競うだけのものではありません)。

    例えば,どのように作業分担や作業手順を決めて作業の効率化を図ったか,また,これまでに履修済みもしくは履修中の授業 (特に,一般力学・運動学,材料力学・構造力学,構造解析・構造設計,設計製図・CAD,機械材料・加工学,最適化・システム計画学,輸送機器論,他) から習得した知識を駆使したり,構造解析ソフトウェアを活用することによって,どの程度安全かつ合理的な設計を行ったか,等々です。
  • コンセプトの立案時,構造設計の完成時,プロジェクトの終了時に,それぞれプレゼンテーションを行い (3回),最後に,個別でレポートを提出してもらいます。これらは全て成績評価の重要な対象です (特に,最終プレゼン+レポートは全体に占める割合も高く設定されています)。

    具体的には,自分の考えを言葉や図を用いて,限られた時間の中でいかに相手に理解できるように分かりやすく伝えることができるか,さらに他のグループが行うプレゼンに対して,積極的に疑問点や問題点を探して質疑応答できるかを評価します。
  • 各グループには担当教員とTA (大学院生) が付き,アドバイスを行います。

    また,実験をして材料や乗り物の強さを確かめたいときは,その企画をした上で担当教員に申し出ることが可能です。


この授業における担当教員側の役目は,悩ましいところや分からないところを一緒に考えたり,しきりにケチをつける (問題点を指摘して,その解決方法を考えさせる) ことです。 したがって,問題解決のためには,どのような情報が必要で,どのように課題を設定して取り組めば良いのか,受講生の皆さんには自ら考えることが求められます。

そのような能力を高めることは,皆さんがこの先社会に出て (技術者や研究者として) 活躍する上で必要不可欠と言えるでしょう。

シラバス / 教育内容紹介

今(2024)年度の授業につきましては,授業計画 (シラバス) を御覧下さい。



また,この授業の教育内容 (目的) を,下記のリンク先にて詳しく紹介しています。

> 日本船舶海洋工学会西部支部・メールマガジン第20号 (2008年10月) より「輸送機器環境工学プロジェクトⅡ (Paper Vehicle Project の概要)」
   (当時の教育課程:  工学部(旧)第四類の輸送機器環境工学プログラム輸送機器工学課程)